下・仲通り商店街の今、そしてその未来は?

(この記事は仲通り商店街の記事の続編となる。焦点は活気ある過去から現在、そして不確実な未来へと続く。)

 

西荻窪ではここのところ、再開発についての話があちらこちらで聞かれるようになった。西荻は、多くの個人店が集まる賑やかで住みやすい場所として知られている。しかし、この人気があだとなってか、今の西荻の環境を脅かし始めている。 駅南口すぐの仲通り商店街は歴史はあるがその分建物も古く、再開発の標的となっている。

 

引き続き、仲通商店会会長の小林正敏さんに再開発の現状と展望をうかがった。

「今、私、再開発の会長もやってるんですけど、地元も個性とか文化を残した形で街を少しずつ進化させていきたいて。ただ道路を広げてマンションを高くしても、どこ行っても同じようなところになってしまいますから。西荻は駅から近いところに焼き鳥屋があって飲み屋さんがいっぱいあって、サラリーマンの人は軽く一杯飲んでて。」

「こういう再開発って業者任せになっちゃうんで。住んでいる人、地域の人がどうやって町の個性を残した形で町を新しい景観にしていきたいか。町の個性を残すことがネガティブになるという考えもあるけど、でも、それは、いい個性をある程度見つけて。」

「今、建物にしても、ほとんどが十坪ほどの店舗ですし。それだとビルは建てられないし。それと一つはね、やっぱりあの、商店街でも、今、日本人に欠けているのはいろんなことを経験した人が少なくなっているの。」

それはつまり、小林さん曰く、地域の開発等でリーダーシップをとれる人材が減ってきているとのこと。

「だから私たちは地域の人たちにアンケートをしましてね。区役所に持っていって『住民はこういう感覚を持ってますからこういう風に』って言わないと、行政の思うように『こうゆう風にしますから』って言われちゃう。そうじゃなくて、地域の人がこういう風に町づくりを想定していますってアピールすればいい。団体も作って地域の人たちから資料も集めて、それを一つの形にして役所に持っていって、荻窪はこうだけど西荻の計画はこういう風にしてもらいたいと思ってますから、と。業者の人たちは全然わかんないんですよね。私たちは商店街でやる。駅の周辺が主力になる、商店街のエリアが一番再開発のエリアになるんで。商店街を優先するっていうのじゃなくて、あの、再開発する駅の一番賑やかなところの土地の地権者が商店街なんだから、こういったように変えよう、と当事者になる。」

 

では、現在、どういった形でやっているのだろうか。

「私たち商店街の人たちが会合作って一つの案を作って、仮の計画を作って、参加者にもっと入れてほしいことを出してもらって、じゃあ、こういった形にしましょうか、とできた試案を作って、それを今度は地域の人たちに持っていって枠を広げる。そういった形で。それでまとまったら役所に持っていく。役所に持っていくときに地元の市議会議員さんとかを通すんです。地元の人はこういう感覚を持っていますからこういう形で、と相談に行きますので、どうか仲をうまく取り持ってください、と地域の議員さんに相談に行くんです。私は地域の議員さんとはみんな顔見知りですから。まだ持っていっていない。今は地元の商店街の人と枠を広げるまでです。そこにエキスパートみたいな人がいるかどうか。建築家だと、あるいは防災の専門家だとか。美術家、芸術家、あるいは本屋さんだとか、そういうエキスパートを入れていくとおもしろいんじゃないんですかね。」

 

今の商店街、そのままではだめなのだろうか。

「みんな古いですし、自分の持っている店だけでは効率化できないんですよ。十坪くらいではビルはできないですよ。そうするとやっぱり、四、五軒集まって六十坪くらいにして、一階の部分は自分の名義にして、上の部分は皆さん共有部分にして、賃貸にして、家賃収入をみんなで分担して、共用部分をみんなで管理して。共同ビルっていうか。」

「仲通りは道路が拡張されるんで商店街の左側の部分が三分の一道路になっちゃうんです。そうする店舗の三分の一が道路に取られちゃうから。でも国が決めたから。青梅街道まで道路の拡張。で反対している人がいっぱいいるんで。商店街がなくなってしまうって。自分の土地十坪しかないのに三坪取られたら残った部分では使い道がないと。そうするとそこに、役所から共同のビル化しましょうっていう提案が来て。大手の業者を仲介に入れてビルにしちゃう。」

 

しかし、役所の担当者が地域住民の身になって計画を立てることは容易ではなさそうだ。

「役所の利益ばかりではなく……というけど個人の店の人は四十年、五十年やってるけど、役所の人は四十年、五十年やっていません。二、三年してテリトリー変わっちゃうと、もう私は関係ない、私の仕事こっち、だってなっちゃう。」

 

町の再開発が難航する原因は、役所の担当者の問題だけではなく、住民の人口構成の変化にもある、と小林さんは思っている。

「今、どこでもそうなんですけど、住んでる人の半分は賃貸物件です。借りてる人は土地の人にならないんですよ。仕事の関係で仕事に通うのに便利だからって。今ここの営業所に行ってるから仕事に近いからいいけど、仕事の担当が変わったら移っちゃう。西荻の人の最低四割の人が賃貸物件ですよ。そういう人は町の人になる意識がない。ですから、そういう話をしても『私はいつまでここにいるかわかんないから、反対とか賛成じゃなくって関心がない』っていう人が。ここに自分の資産があって、地域の学校に子どもが通っていたりするから、地域のコミュニティーを守ろうっていう、そういうのないから。」

そして、西荻の地価も上昇傾向が続く。

「坪六万とか七万。坪六万だとすごいですよ。十坪借りると六十万。私の店も八坪なんですけど家賃五十万なんです。駅降りたらすぐですから。二十秒。十年前に比べたら少しずつ上がってますけど。今はもう、これ以上、上がんない。」

 

高沸する地価、町の価値が注目されるようになってきた西荻。深刻な問題も起こっているようだ。現在まさに問題の渦中にある仲通り商店街の老舗ジーンズショップのオーナー、多田さんにお話をうかがった。

「今は再開発とかかかってるからねぇ…。ここの地面を買い取った人がいるのよ。このクリーニング屋さんからここ。ぼくんところはこの真ん中の部分だけが自分ところなので、買えなくて、あとの借りている部分を買っちゃったんですよ。(三月)十七日に判決が出る。向こうが一年間、大家さんが変わったのに振込先を知らせなかったんですよ。一年たってから知らせてきて、『知らせてなかった一年間は払ってないから出て行ってくれ』って。隣の花屋さんは一月に判決が出て勝ったんですよ。うちは十七日に判決が出るけど弁護士さんが勝つからって。そういう圧力かかってて…。だからね、ほんと危ないんですよ。ここ。うちの部分(多田さんの土地)がちゃんとあるからできないんですけど、ここ、(建物は)つながっている物件だから。うちの部分は店の四十パーセントぐらいしか権利がないんですよ。今、十パーセント足して土地を半分あげるから、新しく建てるお金を出すから、全額ではないんだけど、それで出てってくれないかっていう話になってる。」

つまり、多田さんの所有する土地は十パーセント増えるが、現在の店舗と店がある場所の半分は賃貸のままなので新しい地権者のもの。建物は長屋で隣とつながっている。隣の店舗も出てしまい、建物自体を取り壊すことになれば、多田さんには新しい住まい兼店を建てる費用は払うから出て行ってほしい、ということだそうだ。

仲通りの他の店はどうなのだろうか。

「他は借りているだけだから。花屋さんも。立退料がある程度になれば出て行ってもいいって。地面を平らにして、どこか大きなとこに売りたいんだろうね。」

 

「知ったのはね、平成二十三年くらいにね。隣の日本そばの鞍馬さんとかダンテさんとかも集まって。今、出てってくれって言ってる人じゃなかったんだけど。鞍馬さんとこで話し合い。それが平成二十三年くらいに始まって。隣のラーメン屋のものすごくやり手のお兄ちゃんが会長になったの。そういうところに買い占められたら困るっていうんで、杉並区役所で調べたら、『全員がハンコをついたので(実際に誰もそのような内容の書類にハンコをついた覚えはなかったそうだ)、この通りの閉鎖できますか?』っていう願いが出てたの。こっち(仲通り商店街)を買ってしまって、そうすればここ私道だから、ここ閉鎖してしまって通りをなくしてしまいたいって。そんなことを隣のお兄ちゃんがかぎつけて、これは大変なことになっちゃうって。吉祥寺の都市づくりの専門の弁護士さんに依頼しようって。町会全体で。最初、着手金五十万払って、町会費で払って、それで始めたんだよね。そこからこっちの通りを全部買おうとしてたんで(鞍馬やダンテがある通りと、オークランドの通り)。いろいろ交渉やって、そこがうまくいかなかったから、こっちはたまたま大家さんが年寄りでそこへ訪ねて行って(土地の権利を)もっていっちゃったの。それで大変になっちゃった。」

「商店街の役員で全員で弁護士の先生のところに行ったたんだけど、それが一段落して、その人たちが今の(オークランドがある土地を)買う人に任せちゃって。それからが今度は個人の裁判になってるから、町会でやらないで個人個人でって。で、四十万円の着手金払って、弁護士さんにやってもらって、一年くらいごたごたやっているうちに裁判起こされて。『一年間払っていないのがあるでしょ』って。」

「集団がばらばらになって、裁判などを仕掛けられると怖くなる。『もういいや』になっちゃう。十七日に急展開するかもしれないですよね。半分くれて全部は出さないけど建てる費用をくれるっていうなら、弁護士の先生もそれはありじゃないですかって。おんなじ建物より離れたほうがいい。そのほうがいいって。ちょうど今大詰めです。」

この後、十七日の判決で多田さんは勝訴する。しかし、多額の弁護士費用がかかったとのこと。個人店にとっては厳しい出費だ。このようなことを繰り返されれば、誰もが疲弊して「もういいや」となってしまうだろう。

 

道を広くしようという計画は以前からあるが、今、土地を買おうとしてる者たちは駅前の再開発も視野に入れ、今後も地価が上がる、と、買い上げを進めているのだろう。

では、今後、再開発は進むのだろうか。

「でも難しいんじゃないかな。高円寺(東京都都市整備計画)は中止というか、延期になってる。でも、もう計画で決定されているから中止にはできない。」

「会長は、昔果物屋さんの小林さん。小林さんも説明会には出るけど、(道路の拡張計画は)無理なんじゃないのーって。小林さんのところは今大丈夫。うちのところが真ん中だけ自分で持ってる変なところだから。家主さんはおばあちゃんが持ってたけど、何年か前に亡くなったから、権利がなくなって…。そういうところを法務局に行って、買っちゃおうって人たちが。あそこのクリーニング屋さんもね。『二階建てにするよ』って言っても、まあ、まず建てないから。(まずは更地にする)そう。だからうちを買っても契約はしない。新しい大家さんと契約しちゃうと権利が出ちゃうから。」

 

オークランドの並びの店には、すでに立ち退いた店もある。裁判に勝ったとはいえ、じわじわと周りの土地が買い上げられていくのは気持ちのいいものではない。

「ほんとはそれなりに区が買い上げて道を広くしたいみたいだけど、これだけ買うのはね…。個人の持ち物だったり、借家の人もいて。」

 

仲通り商店街の現状としては、この商店街に店を出しそこに住まいもあるのは三件だけだ。

「ここと文房具屋さんと、花屋さん。そんなもんかなー。どうしてなのか?それは結局、後継ぎがいないというのと、あとはやっぱり経営的に難しい。大きな大規模店とかで。お花だとかなんだとか難しい。西友で買ったり、あとは需要がなくなってるのかねぇ、個人の店とか。服だとユニクロとか、ファッションビルとか。(でも、ファッションビルでもそんなに買い物してないような…)してないねぇ…。消費自体が本当に厳しくなってきてますよね。先のことが心配だからみんな使わないのよね。お金をね。将来に向けて貯めておこうって。この十年間くらい。消費税が上がる前にみんなわーって買い集めて。でも、その後は…。」

 

商店街の今後についてもうかがってみた。

「将来は…どんなんだろうね…。自分の希望としては…。大手のデベロッパーが全部の開発にかかわってるんだけど、そこが最初は全部買ってくれるはずだったんだよ。その土地を買っちゃった人たちから。」

大手デベロッパーも入れ、町づくり団体として話し合いが行われていた時期があったそうだ。しかし、その話し合いに使われていた簡単な仮図面がツイッターに流れてしまう。簡単な図面だったので詳細は描かれていない。描かれていないため真っ平にされると勘違いされてしまった。駅周辺の飲み屋街辺りだ。

「簡単に作っただけの図面だったのに、それを描いたのは誰だ?ってことになってしまって。デベロッパーは西荻のいいところを残しながらリノベーションしましょうとしてたのに。先にはもっと大きなものを建てるようになるとは思うけど、まずなおしながら、折り合いをつけながらやろうっていうことだった。」

一部から反対運動が起きるなどし、結果として、大手デベロッパーは一旦手を引いたそうだ。

 

白紙に戻った仲通り商店街の再開発計画。しかし、再開発の話はこれからも続いていく。

 

社会の高齢化によって商店街にあった「大都市の中の村」の社会構造はすでになくなった。 店主が店の上に住んでいた時代や、住民が地元の小さな小売店から日用品を購入していた時代に戻ることはない。建物も老朽化が進み、修理修繕建て替えが必要だ。しかし、どのようなやり方がベストなのかの判断は非常に難しい。「西荻の町の空気感」を愛する人たちにとって、今後の展開は心から気にかかるところだろう。地上げの話も今後、あちらこちらで出始めるのではないかと思われる。

 

西荻町学としては町が変わろうとしているこのとき、町はどう変化し、変化させられ、人々がそこにどのように関わっていくのかを引き続き見つめていきたい。(ファーラー・ジェームス、木村史子、5月11日2020年)

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