都市空間を再編成するコワーキングカフェ

パチンコ店運営会社が西荻窪の都市空間を再編成している。昨年2021年十二月一日にオープンした、西荻のコワーキングカフェ「LifeWork Cafe」。コロナ禍の中テレワークの増加などにより需要が高まったコワーキングスペースとカフェを融合させた新感覚の空間は、駅からの近さ、設備やフードドリンクの充実度と六百平米に渡る店の広さにより高い人気を誇っている。そして何よりも特徴的なのが、同じタイミングで同ビル四階にオープンしたフィンランド式サウナ「ROOFTOP」。パソコンに向かう時間の前に頭をリセットさせたり、また仕事後に疲れを癒したりと、「ととのう」体験を求めてカフェと一緒に利用するお客が多い。

 

「私たちの母体はパチンコ店なんです。今、一階二階にあるパチンコ店が、私たちの基幹事業になります。」

そう話すのは、館長の島村勝雄(しまむら かつお)さん。島村さんは、このコワーキングカフェとサウナが、同ビルの一、二階を占めているパチンコ店運営会社の「メッセ」が経営しているものだと話してくれた。2020年の十二月に一、二階のパチンコ店を開店させたのち、三階と四階が空いていたため昨年の三月ぐらいから新規事業の構想を練り始めたそうだ。

 

「ちょうどコロナ禍ということもありまして、ビジネスや一人で没頭できる空間を作ってみたいなという考えと。あと、オーナーが…サウナが好きだっていうこともありました。」

「サウナがもたらす効果っていうのも興味深くて、フィンランドって幸福な国ナンバーワンなんですね。そのフィンランドにはサウナ文化がある。その幸福というものを追求してみようと。コワークで勉強や仕事をして脳が疲れます。疲れたら、サウナで脳を休めてリフレッシュ。そんな施設です」

 

「お客様の居場所になっていただきたいという思いで、営業した結果、店舗数はどんどん拡大していきました。『あなたに会いに来てるのよ」そんなお声をいただくこともあります。」

メッセは中央線沿いに沢山の店舗を持ち、都内で上位三位に入る大きな会社になりつつある。代表取締役の宮本茂(みやもと しげる)さんのご両親が会社を設立してから三十年が経過しており、今は東京のみで重点的に事業を展開している。社員そして会社全体の幸せを追求する「大家族主義」という経営方針を掲げ、パチンコの領域を超えて日々新規事業やサービスのチャンスを開拓し続けているという。

 

その新規事業の第一弾であったのがこのコワーキングカフェ×サウナの複合施設。そもそもなぜコワーキングスペースとサウナなのか。

「朝サウナ入ると気持ちがリセットされるので、そのまま仕事をすると集中できるし眠くならないんですよね。」

 

サウナには肉体疲労を回復させ、エネルギーを再生産させる効果があるそうで、これから仕事や勉強に取りかかりたい時やその後に疲れをとりたい時に最適だという。そのため、カフェの利用者の五人に一人はサウナを利用していく。

「平均滞在時間は大体六時間ぐらいですね。あんまり一時間二時間とかでここを使うっていう方はあんまり今いないですね。朝から来てがっつり夕方まで仕事をして、で最後にサウナ入って帰るっていう方もいらっしゃいますし。」

 

テレワークの需要が高まるきっかけであったコロナウイルスの影響が、新規事業のアイデアにどれほど影響したのかを伺った。

「コロナが始まった時に、何が起こったかっていうとやっぱり自殺だとか、あったんですね。それがなぜそうなってしまうのかなって考えたときに、やっぱり一人で冷たい空間で、個でいるということで、やっぱり心が病んでしまって、自殺だとかそういう風なマイナスなものが起きてしまったので、じゃあそこで我々が何かできないかっていう時に、温かくも潤いのある場所っていうのを作ろうって思ったのがこの場所ですね。コロナからヒントを得たっていうのが大きいかもしれないですね。」

コロナ禍でオープンし、今もまだ予断が許されない中での営業だが、ワーキングスペースという特性上、ズームと飲食を許可している空間だ。そのため、お客が安心して利用できるよう、特にマスク着用の声がけは徹底している。

 

コワーキングカフェの空間づくりで宮本さんがコンセプトにしているのが「家」。

「集中できるスペースではあるんですけど、コンセプトは家なんです。家の延長線で。町の中にある家っていう、で家の中にある町っていうのを考えています。」

単純に個人用ブースや会議室、そして飲み物を提供するだけでなく、セルフサービスでおつまみを用意したり、漫画のセクションを設けたりヨギボーを設置したりと店内には雰囲気を家に寄せるための様々な工夫が見られる。また、お客達の体験が個人で終わらないよう、家感にプラスαでヨガ教室やパブリックビューイングなどのイベントも開催している。こういった企画で漫画喫茶、ネットカフェや都内の他のコワーキングスペースと差別化していく狙いがあるそう。

 

「ネットカフェはどっちかというと完全に個ですよね。個なので、僕たちはフリーの空間を提供しているので、そこが圧倒的に違うのかなっていうのと、『家の中の町、町の中の家』っていうのがコンセプトですので、やっぱり(人と人とを)繋げたいなっていうのがあるんですよね。ネットカフェでは繋がらないですもんね。」

このコンセプトに基づいて「町との繋がり」を強化していきたい意向が島村さんにはある。

「うちは、『ここら辺、みんな結託してるから変なことすんなよ!』って結構言われることもあったんですよ。」–

昔ながらのお店や個人店が多くある西荻に参入していくにあたり、最初はあまりよく思われなかったこともあったそう。

そんなこともあり、町との連携を持つため、地元の美味しいものをメニューに取り入れることにも力を入れている。例えば町の有名店のカレー。

「なぜカレーかというと、サウナの後ってカレーを食べたくなるらしいんですよ。...だからカレーを置いてます。」

ゆくゆくは、ここに来れば西荻で一番美味しいものが全部食べられるようにしたい、と島村さんは話す。

 

「とにかく町と連携して、企業と企業とを繋いだりだとか、人と人を繋いだりだとか、あとはその斜め。企業と人とを繋いだりとかもありますし。そういうところをどんどんどんどんやっていきたいなっていうところが、いまの構想の中にある感じですね。」

「非常に住みやすい場所だっていうのを皆さんおっしゃってて。だから温かい人たちばかりなので、こういう人のために仕事したいなあってやっぱ思いましたよね、だから(西荻での)存在意義っていうのは、『この方達に幸せになってもらうために空間を提供したい。』っていうのが大義としてあるのかなと思います。」

 

店内を見渡すと、仕事中の男性のお客が多くみられた。

「男性が多いですね。...十五%ぐらい女性ですね。...だから 女性に受けるものをもっとたくさん置いていかないとな、と思ってます。そういう企画も用意していかなきゃいけないなっていう風に思ってるんですよね。...世代的にいうと、大体三十代の男性の方が全体の大体五十%ぐらいを占めますね。で四十代が大体三十%ぐらい。」

島村さんによると、社会人以外も、受験生などの学生が一人で勉強に利用していることも多いそうだ。

「お客さんは西荻の人、この辺の人が多いですね。...常連さんでも西荻の方が多いです。」

 

また、「オフィス離れ」が主流化してきている今、大企業がLifeWork Cafeの会議室を打ち合わせのために利用することもあるそう。

「熱い会議が繰り広げられてて、で、お酒が飲めるんですよ。だから終わったあとお酒を飲んだりとか。」

また、学生の利用も稀ではないと島村さんは話す。

「学校のなんか打ち合わせ?学生さんなんですけど。... サークルの打ち合わせとか。あとサウナ部っていうのが最近部活、大学とかであるみたいで。... その部で上を使って下で飲むっていう。」

 

お客は、LINEアプリを使用してカフェとサウナの会員登録・施設利用を行うので、会社としてはお客のプロファイルと施設利用状況を正確に素早く把握することができる。それによって、ニーズ分析もスピードアップし、サービスや業務の改善を的確に行うことができるのであろう。現在、リピート率は三十五%まで上がり、島村さんは店へのニーズが高まってきていることを実感している。

「コロナが落ち着いたとしても、テレワークっていうのはずっと永遠に続いていくものだなっていう風に私は思うんです。」

 

これからはお客同士を繋げる機会も設け、お客へのさらなるニーズ対応の進化に拍車をかけたいという。

「スタディの方を拡張していきたいのと、先生と繋げるとか、例えば家庭教師と繋げるとか、そういうことをちょっとやってみたいですね。... こんなものを学びたいっていう学生さんがいて、その道のプロがここにいたとしたら、それとそれを繋げてあげるとか。今こういう風な仕事をしてみたいっていう人がいて、そういう風な構想がある人をつなげてあげたりとか。そういう風なコミュニティマネージャーというものを配置していくとか、そういうことをやっていきたいと考えていますね。」

 

最後に、島村さんに「お店で一番自慢できること」を伺った。

「一番自慢できること?いっぱいあるんですけどね。... 四階はまず...空が見えるんですよ。で東京都で空見ながら、…普通結構そういう風な、網目の格子状のガードが入ってたりとかするんですけど、うちもう全部解放しているので、たまに電車の音が聞こえてきて、たまに鳥が通ってっていう風なことを見てると、『ここは本当に東京なのか?』って。だからルーフトップっていう名前なんです。」

外へ解放することによって掃除の手間が生じたり、雪が降ったりなど天候による対処に時間はとられるが、お客達に都内では普段感じられない「非日常感」を感じてもらいたいと、ルーフトップにする覚悟は構想の段階から決めていたそうだ。

 

「三階に関しては実はですね、裏コンセプトがありまして、向こう(店内)からこっちずーっと一直線になってて、実はこれ中央線をイメージしたんですよ。...駅が個室になってるっていうイメージで。で、ぽんぽんぽんぽんって配置されているのはそこから作ったんですけど、...だから、実は、オレンジじゃないですか、中央線のカラーなんです。...シャンデリアとかもそうですし。キーカラー、オレンジにしてるっていうのがそういう意味合いもあります。」

 

ビジネス街から娯楽街までが揃う、東京都の中心を走る中央線。ここは、その騒々しい、だがどこか落ち着いている魅力を、仕事場とサウナという組み合わせで体感できる場所かもしれない。これから暖かくなるにつれてカフェテラスでのバーベキュープランなど、新規サービスも続々増えていくそう。西荻では、新たな商業的社会空間が生まれている。 (ファーラー・ジェームス、本村まりさ、木村史子 2022年5月15日)

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