こだわらない、けれども、こだわる

「そうですね。あんまりこだわってないです。雑誌にも『こだわってない蕎麦屋』って載ったんですよね(笑)。」

ラフな感じでこうこたえてくれたのは蕎麦とワインのお店、「吉」のオーナー立澤光太さん32歳。普段は奥様の立澤いよりさんと共に、若夫婦二人で店を経営している。おおらかなオーナーと奥様はとても仲が良さそうだ。

 

食に関心がないとは決して言えないけれども、いわゆる「食通」と呼ばれるような人たちのことはあまりに気にしていなさそうだ。ただ「酒と蕎麦を楽しむ人の為の空間」を創りたかったそうだ。

 

こじんまりとしたバーのような空間は、友達と一緒にデザインをしたとのこと。

「なんかね、あんま深く考えてなくて(笑)。そもそも蕎麦屋としての経験もなかったんで。蕎麦屋のイメージというか、もっと気軽にお酒を飲めるのを蕎麦でやりたかったんですよね。なんか、親父の楽しみってなってるのかな、立ち食いの蕎麦屋しかないじゃないですか。だからもっと、お酒を飲めて、蕎麦を食べられるっていうのをやりたくて。」 

 

もともと料理の経験があるわけではなく、あくまでも蕎麦とワインが好きだからお店を開いた立澤さん。インスピレーションとなったのは、下町葛飾区にあるおでん屋さんだそうだ。

「ぼくがよく知っていたお店がおでん屋さんだったんですよ。おでん屋なんだけど、ワインおいているお店で。」

 

蕎麦とワインの組み合わせというとあまり想像がつかないかもしれないが、立澤さんとしては特に蕎麦に合うワインを置いているというつもりではないそうだ。

「ワインとのペアリングを強調していないです。蕎麦がどんなワインと合うかは個人的な好みなんで。」

 

やはり、開業すぐの頃は、「蕎麦通やワイン通がお店に来ることも少なくなかった」そうだ。

「最初は(お客さんが)困っていたんですけど、だんだん来なくなるっていうか、諦めるみたいな。でも今は、そもそも蕎麦に合わせてないですよって最初から言っちゃえる人たちなので楽ですね。で、なんか、楽しみにして来たのに、とか言われると、一応これとこれが合うんじゃないかなとかって提案はしますけど。」

 

置いてあるワインは全てがビオワインで、日本酒は自分の好きな酒しか置かないという立澤さん。

「日本酒もワインもそれぞれ個人店の酒屋さんと付き合ってて、そこのおすすめ。そもそもその店も、ワインはビオワイン、お酒は純米っていうふうに決めているんで、種類が少ないんですよね。」

 

開店して2年経った今、お客さんのほとんどが西荻通の人たちである。

「あんま苦労して宣伝みたいなのはしてないです。自然に口コミとか、あとはさっき言ったお店の紹介とかでだんだん増えて行って。あとは、この辺の人は飲んで西荻を楽しみたいみたいな。やっぱり新しい店ができると、だいたいみんな気になって来るんで。たまに、ネットとか、あと雑誌も何冊か載ったんで、それ見て、って言う方もいますけど、まあ、ほとんどは通りがかりっていうか、西荻に住んでる方の方が圧倒的に多いんじゃないかなと思います。」

 

吉は、西荻窪の他の店のオーナーたちもよく飲み来るスポットでもあるそうだ。

「中心部っていうかお互いにけっこう来てるというか。休みの日がかぶってなければ、定休日だから吉祥寺の店に飲みにいこうかなとか、逆にその人たちがうちにきてくれたりとか、お店同士で行ったり来たりとか。結構やっぱり、周りのお店とのつながりは多いですね。」

 

店が多い分、店同士の関係も密な西荻。吉で使用する食材も多くは西荻で仕入れているとのこと。

「食べ物はけっこうそうですね。八百屋さん、お豆腐屋さんと、あと、鳥の専門店、とか。」 

 

蕎麦や酒の値段はかなりお手頃である。

「お蕎麦もうちではね、本当に定番のお蕎麦しかおいていなくて。もり蕎麦ってつゆにつけるやつと、かけ蕎麦って汁に入っているやつで具はなにもなくて。定番はこのもり蕎麦スタイル。一応750円で。」

「一番定番のワインがグラス500円で、あとはほんとにものによってなんですけど、700円から上限で1000円くらい。」

 

吉は、若い客たちに、そして西荻住人と西荻の飲食店経営者達にとって、包容力のある優しいお店であるようだ。(ファーラー、松村、木村、11月15日2016年)
 

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