マイロードから南インドへ

東京では南インド料理はとても珍しい。にもかかわらず、西荻のマイロード商店街の中に一件存在している。駅から入り、西荻窪整骨院前に立つ季節の装いをしたおしゃれな人体骨格模型に挨拶し、その先のRustyという女性向け洋装品店を過ぎ、階段を降りると、すぐ右側にあまり目立たない大岩食堂がある。こんな庶民的な商店街の中に南インド料理屋がある。これは、アメリカ郊外のショッピングモールに突然南インド料理屋がある、といった風に想像できるだろう。外見はさして目立たないが、供されるものはとても美味だ。

 

もう一つの意外な発見は、この店はネパール人やバングラデシュ人など南アジアの人ではなく、日本人である大岩俊介さんが経営しているということだ。調理専門学校へ通った後、自分の得意分野を生かしたいという気持ちを持ちつつフリーターをした。

しかし、その後、本格的に料理の世界へ。イタリアンやフレンチ料理の世界ではプロが数多くおり、独立が難しいと思った大岩食堂オーナーの大岩さんは、スリランカへカレーの勉強に行った。そして帰国し、南インド料理のレストランに務め、その後独立。

 

大岩さんは、最近あちらこちらにあるインドカレー店と大岩食堂の料理の違いを快く説明してくれた。

 

都内でよく知られているナンと食べるカレーは北インドのカレーであり、南インドカレーと比べると油っこい。西荻には会社が少なく夜遅くなって職場から帰って来る人たちが多いため、大岩さんは毎日食べられるカレーを目指し、油をほぼ使わない、豆などを多く使ったヘルシーな南インドカレーを提供したいと言った。ドーサ(南インドのクレープ)のような人気のある南インドメニューはやっていないが、 昔、南インドでバナナの葉っぱに乗せて食べていたミールズ(meals)という定食を提供している。使用している野菜は西荻窪の八百屋で仕入れているものだ。

 

「北インドとかあっちのほうは油っこくて、で、あのインドって出汁とる文化がないんで、ひどいとこになると、ほんとにお湯にスパイス溶いてんじゃないかってくらいのが結構あるんですよ。で、味が引き出せてないとか。どっちかっていうとそういうヨーロッパの料理とかは出汁とったりするんで、ブイヨンに慣れてる人間からすると奥行がない味。で、なんかどれもおいしくねえなって思ってたんですけどね。南インドのカレーはわりとベジタリアンのものも多くて、野菜だけでなんでこんなに美味しいんだろうっていうのがすごく多かったんですよ。そのころは妻の影響もあってお肉、魚をほとんど食べない生活をしていたんですけど、これならやっていけるな、肉魚なしでも、って」

 

お客様は西荻に住んでいる人たちの方が多いそうだ。

「仕事が遅くなって帰ってきて、夜10時ぐらいに毎日とんかつ定食だと結構ヘビーじゃないですか。けど、野菜中心で油控えめの野菜カレーだったら、9時ぐらいに来てバクバク食べても罪悪感がなく、食べられる、みたいな。で、そのベジタリアンのものって結構満足度もあるじゃないですか。豆も使ってるんで。もちろんお肉を食べたっていう、なんだろ、視覚的効果はないですけど、なんかなくても全然満足できるものだったりするので、だからなんかそういう人たちが来てくれればいいなぁ、と、うちは、はい。」


大岩さん自身も西荻窪住民。店がはけたあとは西荻窪にあるそばとワインの店によく行そうだ。そもそも、西荻窪でお店を開くことになったのもこのそばとワインの店がきっかけだそう。当時、奥さんと引っ越し先をさがしていた大岩さん。奥さんが友達とランチに西荻窪にきたことで西荻窪に興味が湧き、その後、話を聞いた大岩さんが町を見に来た際、帰りに寄ったのが、このそばとワインの店だったそうだ。カレー屋を開きたいと話したところ、店のオーナーからカレーのイベントをやろうという話を持ち掛けられた。そこからスタートして、西荻窪にお店を持つことになった大岩さん。今でも西荻窪のレストランオーナー達とのコミュニティー感は強いという。

 

「そうですね。ぼくの場合は、まあ普通にランチだけして挨拶とかしたりするだけの場合もありますけど、なんかここのお店いいなぁってなると、実はカレー屋やっていて、っていう話をすることもあります。まあ、飲みに行って知り合うことが多いですけど(笑)」

 

大岩さんは店を経営するのに忙しく、なかなかゆっくりは飲みに行けないそう。とはいえ、少ない時間の中での飲みニケーションで他の店のオーナー達とのコミュニティーを構築しているようだ。(ファーラー、松村、木村, 7月27日2016年)

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