心と体をいたわる古民家カフェ

賑やかな大通りを少し入ったところに佇む古民家を活かした「一軒家カフェ&サロンhana」。懐かしくて温かい昭和の面影が残っており、お店を入るときに「ただいま」とつい声に出してしまうお客様もいるほど居心地が良い。この大きく、且つ入り組んでいる一軒家は元々住宅として使われていたそうだが、商業用に改装する際、大家さんの手で木目や竹が特徴的な昭和調の空間づくりがなされた。2015年のオープン以降、「よろこびとくつろぎを分かち合う場所」としてカフェのみならずセラピー、そしてコミュニティスペースとして西荻の街で親しまれている。

 

「セッションの後にくつろいでもらえる場所があればなということでカフェとサロンと両方できるところをやってみようかなと思ったのが始まりです。」

お店を経営されているのは、元々セラピストとして活動されていた李英淑(リ・エイシュク)さんご夫妻。以前は板橋区でボディワークやカウンセリングをするサロンを開いていたが、旦那様の朴奉圭(パク・ボンギュ)さんが脱サラしたのを契機に、セラピーだけでなくそこにプラスアルファの体験を提供できる場所を作ろうと思い立ち、現在のような店にしたとのこと。元々のサロンでもセッションが終わった後にお茶や美味しいものを出していたのを「カフェ」という形でセラピーに融合させ、今のお店のスタイルが築かれた。

 

昭和のレトロな雰囲気が魅力的なhanaだが、店を開くにあたって空間づくりにどういったこだわりがあったのかを伺った。

「二人のイメージの中ではなんかこう、お店が通り沿いにあるというよりは、ちょっとだけこもっていて、ちょっとだけ中に入っていてあまりガチャガチャしていないところで、なんか一軒家で上下でできたらいいねっていうのはずっとイメージがあったんですね。...古いものとか私も大好きで、古いお家でもいいなあ、それをちょっとリフォームして使えたらいいなっていう風になんか思いながら、貸していただけるところを必死に探していたんです。」

 

飲食を伴う商業を禁止する住宅が多い中、西荻の古民家で「店舗も可」という物件をインターネットでたまたま見つけた李さん。西荻は学生時代に何度か遊びに来ていたため何となく雰囲気は知っており、落ち着いていて且つ個人のお店が多いこの町の雰囲気が自分のイメージとマッチしたという。

「条件が全部揃っていて、なんか来た時に、ここなら駅からも割と来やすいし、割と皆さんに来ていただきやすいかな、なんか続けられそうかな、と思って貸していただくようにお願いしたのが2015年ですね。」

 

この物件がお店として使われるのはhanaが初めて。まだここが住宅用だった時代に住んでいた方がお客として訪れたこともあったそう。

 

「高校生ぐらいの娘さんとお母さんが元々住んでいたんですよって言って。『この子がまだこんな小さいときですけど』って言ってたんですけど。びっくりしましたね。嬉しかったです。こんなに綺麗じゃなかったって言ってて。なんか随分、もっとボロボロだったって言ってましたけど(笑)。」

 

確かに築八十年にも関わらず、床や天井などが綺麗に改修されている。今の空間づくりには李さんのみならず大家さんのこだわりが詰まっているそうだ。

「大家さんがすごく古い家具とかも好きで、なるべく昔のものを残して、綺麗にしてくださっていたので。そういうなんか、昔の昭和の日本のお家みたいのを味わってもらえたらなというのはありますね。」

大家さんが作り上げた昭和の雰囲気を残しつつ、机や椅子などは西荻のアンティーク街で李さん夫妻が見繕って購入したという。

 

スペースが十分すぎるほどある古民家の間取りを活かし、基本的には下がカフェ上がサロンという形でサービスを展開しているが、二階はレンタルスペースとしても貸し出しているそう。

「二階は三つお部屋があるんですけど、ボディーワークをする方もいますし、こう対面のね、セッションを私もすることもあるんですけど、そういうカウンセリングとか、なんかクラフト作ったりとかそういうワークショップやる人もいるし、大きいお部屋、八畳ぐらいあるお部屋だと、この一、二年はコロナ禍で随分減ってしまったんですけど講座とか、そうですね、色々。今朝もお顔のエクササイズの講座してくださってた方がいたんですけど、そういう方とか、あと読書会とか私はしてるんですけど、みんなで本読みあったりとかっていうイベントをしたりしてるんですけど、そういうこととか、定期的に使ってくださってる方もいらしたりとかで。なんかこう、二階で色々そういうことをして、降りてきてお茶飲んだりとか、そういう風に使っていただけたらなというのがあります。」

 

ホームページを見ると、二階のレンタルスペースは予約でいっぱい。子供の英語教室やミーティングなど使い方はお客によって様々であり、地域のコミュニティスペースのような存在になっている。李さんご自身は、花の持つエネルギーで感情や精神のバランスを取り戻す「フラワーレメディ」という植物療法のカウンセリングをメインに行っているそうだ。

 

そしてこのカフェが人気な理由の一つであるのが、メニュー。hanaのメニューを覗くと、普通のカフェでは見られないようなハーブティーや韓国の伝統茶などがある。ここにも李さんご夫妻のこだわりが見受けられる。

「いろんなカフェがありますけど、やっぱり個性を出したいっていうのがありましたから、私も旦那さんも韓国がルーツなので、そういうエッセンスはメニューに反映したいなって。」

 

韓国のエッセンスと、ハーブティーや韓国茶の心に落ち着きをもたらす香り。これらを融合させて展開しているメニューは物珍しいらしく、興味を持つ日本人のお客もいるという。

 

具体的にどのようなメニューが韓国の影響を受けているのか。

「秋冬がベジビビンバをやってます。これはまあ、一応韓国のエッセンスが入っているかと思います。あとおにぎりの具の中に、韓国風おかかっていうごま油の香りがするものが一個あるんですね。結構香りが違うので、みなさん喜んでいただいてます。あとこの薬膳ぜんざいも、日本のぜんざいとは全然違って。高麗人参のパウダーとかね、エキスが入ってるんですけど、シナモンのトッピングがあって。これも、韓国では、そうですね、道端で食べたりするんですけど。... あとさっき見ていただいたお茶ですね。韓国の伝統茶があるのと、あと飲み物で『ミスカル』。ミスカルっていうのは韓国語なんですけど、韓国ではちょっとなんかこう、朝ごはんみたいにして、軽い朝ごはんみたいにして飲むヘルシードリンクなんですけど、そういうものもありますね。」

 

接客に関してはアルバイトに手伝ってもらうこともあるが、メニューの開発や調理方法の考案などはすべて二人で、それも独学でやっている。

メニューへの一番のこだわりについても伺った。

「小豆を使ったメニューで小豆パーラーという別名もつけているんですけど、なんか韓国でも小豆って、冬至の、これから寒くなっていくうちに、小豆の赤い色とか、その厄除け的な意味で食べたりするんですけど、体を温めて、で邪気を払うみたいな。元々そういうのがあって、小豆は冬に食べていたようなんですけど、なんかそういう、体にいいっていうのももちろんそうだけど、小豆を食べるとみんなこう、ほっこりね、甘いものでもありますので、そういう体にいいだけじゃなくてちょっとこうホッとできたりとか。そういうので小豆をとってもらえたらねと思ってます。」

 

しかし、メニューは「こだわりすぎないというこだわり」が大事だと李さんは語る。

「酵素玄米とかを出しているので、結構ビーガンの方とかこだわりのある方も沢山いらっしゃるんですけど、なんかそんなにこだわりすぎないっていうのも、一応…こう、なんか厳格に食事療法とかもするとなんかこう余計ね、緊張感というか、こだわりが余計、何かこう悪循環になっちゃったりとか。私も色々こう、体のこともやって自分もそういう風にしていた時期もあったんですけど、なんかやっぱりバランスが大事かなと思っていて。」

とのことだ。

 

空間づくりやメニューが魅力的なhanaだが、そのサービスの根底にあるのは韓国のおもてなしの文化だ。

「日本と違った意味でおもてなし、食べ物をね、用意するっていうのはあったので、私は家では割と母がいつも父のお客さんとかお友達とか、いつもだれかに何かを食べさせているっていう感じで小さい時から育っていたので、なんかこう、おもてなしするっていうのは私の家では当たり前だったし、そういうことにはなんか慣れていたかと思います。...本当にあの、ご挨拶が、韓国は『ごはん食べた?』って言う、こんにちはの代わりに言ったりするぐらいで、『お腹空いてない?』っていうのが結構ね、あの日常的にも使われる文化があるので、そういうところはね、ちょっと日本とは違うかなっていう感じはありますね。」

 

オープン当初一~二年は集客に悩んでいたそうだが、今では女性のグループを中心に小さな子供を連れた家族やカップルが訪れ、そして常連客もいる。

 

沢山のお客達そして西荻の町に親しまれているhanaだが、新型コロナウイルスの猛威を乗り切るため、試行錯誤をしながら営業を続けてきたという。

「去年の方がやっぱりね、厳しかったですよね。去年本当にね、最初の緊急事態宣言の時は一ヶ月以上ここもクローズしましたし、もうどうしていいか分からない、最初のことですからね。皆さんが、開けたとしても来てくださるか分からなかったですし、...まあその都度見極めながら、状況見てやって来ました。」

 

コロナ禍を契機にテイクアウトやオンラインショップの商品展開も見直し、応援するという意味も込めて沢山のお客から注文が入ったそうだ。李さん夫妻は改めてお客達、そして地域全体への感謝を実感したという。

 

「『やっててくれてありがとう』『変わらずにいてくれてありがとう』っていう感じはありましたかね。」

 

(ファーラー・ジェームス、木村史子、本村まりさ 2021年12月22日)

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