東京のベーグル職人

ここ数年、東京には手作りのパン屋があちらこちらに増えた。その中にベーグル専門店もある。そして、ここ西荻にも何件かのベーグル屋がある。そこには「ベーグル職人」が必ずいる。ベーグルは日本の伝統的な食べ物ではない。日本人はどのようにベーグル職人になるか? その質問の答えを探すために、私たちは、西荻南口から200メートルほど離れた狭いビルの二階にあるポチコロベーグルをたずねた。

ポチコロベーグルの名前の由来は、ここをきりもりする松尾綾子さんと幸子さん姉妹が昔飼っていた犬の名前が「ポチコロ」だったからだそう。姉妹は仙台出身で、まずは妹の幸子さんが、17年前に大学進学のため上京した。その後、綾子さんが上京。まだ仙台にいた頃の綾子さんは、たまたま見つけたベーグルを食べてみて、ベーグルを好きになった。「今のようにベーグル専門店は全然なかった。仙台にいるとき、パン屋さんに行ったらあるぐらい。 」

最初、売ることは考えていなかった。自分たちで食べる分だけを作っていた。「趣味で、独学で始めた。作り方は自分でいろいろ工夫した。本をみてやったりもしたが、レシピはオリジナル。先生はいない。私たち二人とも。」

キッチンにある調理器具を見せながら、二人はベーグルの作り方を説明してくれた。「普通のパンと一番違うのは一度茹でる事。それでもちもち感が出る。発酵はあまりさせない。沸騰させたお湯で、発酵の状態にもよるが、1分ぐらい茹でる。そしてすぐに焼く。しっかり茹ですぎるとだんごみたいになる。水がついているままオーブンで焼く。」

ポチコロのオリジナルレシピのベーグル生地には、いろいろな食材が入る。 特に、季節ものが人気だそうだ。今、店に並んでいる「じゃがいもバジルチーズ」は秋冬限定。北海道のじゃがいも「きたあかり」を生地に練りこんである。

ベーグルは中央ヨーロッパのユダヤ人たちの伝統的なパンだが、20世紀後半、アメリカから全世界に広がっていった。幸子さんは、ベーグルの首都とも言えるニューヨークに行ったことがあるそうだ。「アメリカのベーグルは固い。おいしいけど、別物だなと思う。旅行のときは食べたいけど、毎日アメリカのベーグルは、重たくて食べきれない。日本人は、もちもちしてるものが好きだと思う。」

ベーグルの販売は、綾子さんが25歳のとき、移動販売からスタートした。国立や吉祥寺で、カートを引いて持って行って販売した。ベーグルをサンドウィッチにしたり、焼き菓子なども一緒に販売した。「最終目標がお店だったので、いろんな方に協力してもらい、卸ながら、移動販売しながら、別に仕事をしながら、お店の物件を探した。」

「西荻は、商店街がある町がよかったので西荻に決めた。今、5年間、ここでお店を経営している。出来ればずっと西荻でやっていきたい。」

経済的な面からみれば、ベーグル職人の生活にはあまりに余裕はない。6時~7時にはお店に来て作り始めている。基本的に売り切ったら終わりだが、お店は7時まで。毎日作れる量に限りがあるので、売り上げももちろん、限りがある。しかし、二人は仲良く、黙々とやっている。
「今のところは、店を大きくするつもりもなく、ずっとここでやっていきたい。」西荻の町の一部となりつつあるポチコロベーグル。かわいらしい店の主人たちは、かわいらしい口調でしっかりとこう言った。(ファーラー、木村、2
月17日2016

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